実在の文豪の名を懐くキャラクターたちが、その著作をモチーフとした力で戦う“異能”アクション大作『文豪ストレイドッグス』。朝霧カフカ原作、春河35漫画による漫画および小説を原作に幅広いメディア展開を通して人気を博し、今夏にはTVアニメ第5シーズンが放送されることでも注目を集めている。
アニメを原作とし、2017年に始まった舞台、通称「文ステ」は、実写映画化という新たな境地へと作品の可能性を拡げながら、第8弾となる今作へと歩みを進めてきた。
だが、中屋敷法仁の演出、中島 敦役・鳥越裕貴、芥川龍之介役・橋本祥平を中心とする座組の到達点として、ここで“了”を打つことを宣言。物語は、北米の異能者集団「組合(ギルド)」が巻き起こす巨大異能戦争を描いた『三社鼎立』(2019年上演)、敦が己と向き合い「生命の輝き」を魅せた『DEAD APPLE』(2021年上演)の続きとなる『共喰い』。文ステは、その間にも、ときにまだアニメ化されていない原作を用いて、さまざまなキャラクターたちに血肉を与えながら作品の持つ豊穣な世界を現実へと呼び起こしてきた。また、原作者の朝霧カフカはこの『共喰い』が「一人ひとりが、一番その人らしいことをするよう考えた、その時点におけるキャラクターの総決算」だと語っている。そうした背景をもって登場する総勢23人ものキャラクターたちが、魂を震わせて叫び、走り、ぶつかり合う様は、まさに終劇にふさわしい。毎回、幕開けを告げてきた汽笛の音が、いつになく寂しくも誇らしく――劇場に鳴り響いた。
組合(ギルド)からヨコハマの地を守るべく結ばれたポートマフィアとの停戦協定は継続し、武装探偵社は燃え尽き症候群とでもいうべきぼんやりした日常を送っていた。敦への「復讐」を果たすべく、武装探偵社と同じビルの喫茶店で働き始めた元・組合(ギルド)のルーシー・M(エリザベス・マリー)との掛け合いも微笑ましい。